インボイス制度における内税・外税の記載方法を詳しく解説

インボイス制度

インボイス制度の導入によって、請求書に記載すべき項目が増えました。例えば、請求書には税率ごとに区分し、合計した税抜き価格または税込み価格を記載しなければなりません。

経理処理において、商品やサービスの対価を税込み価格で表記することを内税(内税方式)、税込み価格と消費税に分けて表記することを外税(外税方式)と呼びます。 インボイス制度における請求書は内税・外税のどちらで記載すべきか理解しておきましょう。本記事では、内税と外税の違いや、インボイス制度に対応した内税・外税の記載方法を詳しく解説します。

インボイス制度の請求書に記載すべき項目

軽減税率制度によって、標準税率10%と軽減税率8%の2つの税率が混在する複数税率が導入されました。インボイス制度(適格請求書等保存方式)は、商品ごとの適用税率の違いや、税率ごとの消費税額を取引相手に分かりやすく示すための制度です。

インボイス制度の基準を満たした請求書のことをインボイス(適格請求書)と呼びます。インボイスの様式は、法令や通達によってルールが設けられているわけではありませんが、記載すべき事項が定められています。必要な記載事項が書かれていない請求書は、インボイスとは認められず、受け取った人が消費税の仕入税額控除などに利用することができません。

インボイスに必要な記載事項は以下のとおりです。[注1]

  • 適格請求書発行事業者の氏名または名称および登録番号
  • 取引年月日
  • 取引内容(軽減税率の対象品目である旨)
  • 税率ごとに区分して合計した対価の額(税抜きまたは税込み)および適用税率
  • 税率ごとに区分した消費税額等
  • 書類の交付を受ける事業者の氏名または名称

また小売業や飲食店業、タクシー業など、不特定多数の消費者を相手にする業種の場合、インボイスに代えて簡易インボイス(適格簡易請求書)を発行することが認められています。簡易インボイスに必要な記載事項は以下のとおりです。[注1]

  • 適格請求書発行事業者の氏名または名称および登録番号
  • 取引年月日
  • 取引内容(軽減税率の対象品目である旨)
  • 税率ごとに区分して合計した対価の額(税抜きまたは税込み)
  • 税率ごとに区分した消費税額等または適用税率

インボイスや簡易インボイスに共通しているのが、「税率ごとに区分して合計した対価の額(税抜きまたは税込み)」の項目です。請求書に記載する金額は、税率ごとに合計し、税抜き価格または税込み価格を表記しなければなりません。

税込み価格や税抜き価格は、内税、外税という言葉でも呼ばれています。請求書の金額を税込み価格で表記することを内税(内税方式)と呼びます。一方、以下の例のとおり、税抜き価格と消費税に分けて金額を表記するのが外税(外税方式)です。[注1]

経理処理
内税(内税方式)8%対象税込計(内税):2万9,223円
10%対象税込計(内税):2万9,223円
外税(外税方式)8%対象計:2万9,223円
10%対象計:2万9,223円
消費税額:2,164円
消費税額2,815円

内税と外税には、どのような違いがあるのでしょうか。インボイス制度への対応を前提として、内税方式と外税方式のメリット・デメリットを知っておくことが大切です。

[注1]国税庁「適格請求書等保存方式の概要」P6、P9(参照2023-12-25)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/pdf/0020006-027.pdf

内税と外税の違い

請求書には、商品やサービスにかかった消費税の金額を記載する必要があります。インボイス制度の導入後は、適用税率ごとに区分し、それぞれの消費税額を明記しなければなりません。

消費税額の表示方法は、内税と外税の2種類があります。2021年4月の総額表示義務化の影響で、一般消費者向けの価格表示は内税(税込み価格)にすることが義務付けられました。しかし、企業間の取引の場合は、内税・外税のどちらを選んでも構いません。

ただし、同じ請求書に内税・外税が混ざっていると、取引相手を混乱させてしまう可能性があります。またインボイス制度の端数処理のルールを考慮すると、消費税の表示は内税・外税のどちらかに統一する方が経理上望ましいとされています。

内税と外税の違いを知って、自社にとって使いやすい表示方法を選びましょう。

内税は金額に消費税を含めて表示すること

内税は、商品やサービスの金額に消費税を含めて表示する方法です。例えば、商品価格が1万円で、適用税率が10%の場合、以下のような方法で税込み価格を表示します。[注2]

【国税庁のホームページにおいて内税表示(総額表示)として認められた例】

  • 1万1,000円
  • 1万1,000円(税込)
  • 1万1,000円(税抜価格1万円)
  • 1万1,000円(うち消費税額等1,000円)
  • 1万1,000円(税抜価格1万円、消費税額等1,000円)
  • 1万1,000円(税抜価格1万円、消費税率10%)
  • 1万円(税込価格1万1,000円)

内税のメリットは、商品価格と消費税額を合わせて計算できるため、会計処理が簡単な点です。会計時は消費税を租税公課として計上し、まとめて記帳することが可能です。この会計処理の仕方を税込経理方式と呼びます。

特に簡易課税制度の対象となる中小事業者は、消費税額の合計にみなし仕入率を掛けるだけで仕入税額控除をすることができます。そのため、内税表示を採用すると、会計処理の手間を省くことが可能です。

また一般消費者にとっても、内税表示は最終価格がひと目で分かるため、好まれやすいという特徴があります。

2021年4月からは、一般消費者に対する総額表示(内税表示)が義務付けられました。店頭の値札やチラシ広告、ECサイトなどは、商品価格を内税で表示する必要があります。ただし、請求書や契約書、見積書など、一般消費者からは見えない書類に関しては、内税・外税のどちらを採用しても構いません。

[注2]国税庁「No.6902 「総額表示」の義務付け」(参照2023-12-25)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6902.htm

外税は金額と消費税を別々に表示すること

一方、商品価格と消費税を別々に表示することを外税と呼びます。一般消費者に好まれる内税に対して、企業や法人と取引するときに好まれるのが外税です。

内税は商品価格と消費税が合算されて表示されるため、金額にあまり透明性がありません。外税は商品価格と消費税を分けて表示するため、消費税を差し引いた本体価格がひと目で分かります。

また取引相手(売り手)から請求書を受け取った企業(買い手)は、仕入れにかかった消費税額を計算し、仕入税額控除を行います。請求書に消費税額が別途表示される外税方式なら、仕入税額控除の計算も簡単です。

一概には言えない部分もありますが、BtoCなら内税、BtoBなら外税が選ばれる傾向にあります。自社の顧客や会計基準に合わせて、内税か外税かを選択しましょう。

内税で消費税を記載する方法

インボイス制度では、内税で消費税を記載する場合も、請求書に「税率ごとに区分した消費税額等」を明記しなければなりません。以下は適格請求書の記載例です。[注1]

日付品名金額
10/1小麦粉※5,000円
10/1牛肉※8,000円
10/2キッチンペーパー2,000円
合計10万円(消費税8,416円)
10%対象6万円(消費税5,454円)
8%対象4万円(消費税2,962円)

※は軽減税率対象商品

請求書に商品価格の合計を内税で記載し、同時に税率ごとの消費税額も併記しています。消費税額の計算方法は以下のとおりです。[注1]

  • 10%対象:6万円×10/110=5,454.5円→5,454円(切り捨て)
  • 8%対象:4万円×8/108=2,962.9円→2,962円(切り捨て)

標準税率(10%)が適用される場合は、まず商品の税込み価格を合計し、10/110を掛けると消費税額が分かります。軽減税率(8%)の対象品目の場合は、税込み価格の合計に8/108を掛けましょう。

インボイスを発行する場合は、内税表示であっても消費税額の記載を忘れないようにすることが大切です。

外税で消費税を記載する方法

一方、以下の記載例のとおり、消費税を外税で記載しても問題ありません。[注1]

取引年月日品名数量単価税抜金額消費税額
11/2トマト※83167円1万3,861円
11/2ピーマン※19767円1万3,199円
11/155777円4,389円
11/15肥料57471円2万3,769円
8%対象計2万7,060円2,164円
10%対象計2万8,158円2,815円

※は軽減税率対象商品

外税で消費税を記載する場合は、まず税率ごとに商品の税抜き価格の合計を記載し、消費税額を併記します。消費税額の計算方法は以下のとおりです。[注1]

8%対象:27,060×8/100=2,164.8円 → 2,164円(切り捨て)
10%対象:28,158×10/100=2,815.8円 → 2,815円(切り捨て)

インボイス制度を念頭に置くと、消費税額は内税・外税のいずれの方法で記載しても構いません。内税・外税に関する注意点を守って、自社にとってやりやすい方法で記載しましょう。

インボイス制度に対応した内税・外税の記載方法(注意点)

インボイス制度の導入後は、インボイス(適格請求書)のルールを守って消費税額を表示する必要があります。特に請求書に内税・外税を記載するときは、以下の2つのポイントに注意しましょう。

  • 内税か外税のどちらかに統一する必要がある
  • インボイス制度における端数処理のルールを守る

内税か外税のどちらかに統一する必要がある

インボイス制度の導入によって、請求書の消費税額の記載方法が大きく変わりました。インボイスには、「税率ごとに区分して合計した対価の額(税抜きまたは税込み)」を記載した上で、それに基づいて「税率ごとに区分した消費税額等」を記載しなければなりません。

そこで重要になってくるのが、消費税額の端数処理のルールです。インボイス制度には、消費税額の端数処理は税率ごとに1回しか行ってはならないというルールがあります。

適格請求書の記載事項である消費税額等に1円未満の端数が生じる場合は、一の適格請求書につき、税率ごとに1回の端数処理を行う必要があります(消令70の10、基通1-8-15)。[注3]

請求書に内税・外税が混在していると、1回の端数処理で消費税額を切り上げる(または切り捨てる)ことができません。内税の端数処理で1回、外税の端数処理で1回と、計2回の端数処理が必要になるためです。

そのため、国税庁のQ&Aでは、原則として消費税額は内税・外税のいずれかに統一し、1円未満の端数処理を行うことが望ましいとしています。インボイス制度における端数処理のルールも把握しておきましょう。

[注3]国税庁「適格請求書に記載する消費税額等の端数処理」(参照2023-12-27)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/pdf/qa/57.pdf

インボイス制度における端数処理のルールを守る

消費税額に1円未満の端数が生じた場合、切り上げ、切り捨て、四捨五入など、事業者ごとに任意の方法で端数処理を行うことが認められています。しかし、先述したようにインボイス制度では、「税率ごとに区分した消費税額等」に対して、税率ごとに1回ずつの端数処理しか認められていません。 特に注意が必要なのが、商品ごとに消費税額を端数処理し、後で合算する積み上げ精算です。ここでは、国税庁のパンフレットに基づいて、消費税額の端数処理が認められる例・認められない例を紹介します。

端数処理が認められる例

インボイスを作成するときは、以下の手順で消費税額を計算し、端数処理を行いましょう。[注1]

取引年月日品名数量単価税抜金額消費税額
11/2トマト※83167円13,861円
11/2ピーマン※19767円13,199円
11/155777円4,389円
11/15肥料57471円23,769円
8%対象計27,060円2,164円
10%対象計28,158円2,815円

※は軽減税率対象商品

まず税率ごとに個々の商品の税抜き価格を合計します(外税表示の場合)。

  • 8%対象:27,060円(税抜き)
  • 10%対象:28,158円(税抜き)

その後、それぞれの消費税額を計算し、端数処理を1回ずつ行います。

  • 8%対象:27,060×8/100=2,164.8円→2,164円(切り捨て)
  • 10%対象:28,158×10/100=2,815.8円→2,815円(切り捨て)

端数処理(切り捨て)を税率ごとに1回しか行っていないため、必要事項を満たしたインボイスとして認められます。

端数処理が認められない例

一方、以下の例は消費税額の端数処理が認められません。[注1]

取引年月日品名数量単価税抜金額消費税額
11/2トマト※83167円13,861円1,108円
11/2ピーマン※19767円13,199円1,055円
11/155777円4,389円438円
11/15肥料57471円23,769円2,376円
8%対象計27,060円2,163円
10%対象計28,158円2,814円

この例では、まず個々の商品ごとに消費税額を計算し、その都度端数処理を行っています。その後、計算した消費税額を合計し、税率ごとの消費税額として表示しています(積み上げ精算)。

この場合、端数処理を商品の数だけ行っているため、インボイスの端数処理のルールを満たしていません。個々の商品ごとの消費税額を参考として表示するのは問題ありませんが、消費税額を単純に合算し、積み上げ精算を行わないようにしましょう。 請求書に記載する項目の中でも、内税・外税の表示は特に間違いやすいポイントです。インボイス制度の導入後は、必要事項を記載したインボイスを交付しなければ、取引相手が消費税の仕入税額控除などを行うことができません。取引相手に迷惑を掛けないため、内税・外税の表記をはじめとして、正しいインボイスの書き方を把握しておくことが大切です。

インボイス制度における内税・外税の正しい記載方法を知ろう

インボイス制度の導入に伴って知っておく必要があるのが、内税・外税の違いです。内税とは、商品価格と消費税額を合算し、税込み価格で表示することを指します。一方、税抜きの商品価格と消費税額を分けて表示するのが外税です。

事業者向けの請求書の場合、内税・外税のいずれの方法で消費税額を表示しても問題はありませんでした。しかし、インボイス制度の導入後は、消費税額の端数処理のルールを守るため、内税・外税のいずれかに統一して消費税額を表示することが推奨されています。

内税・外税の違いや会計処理上のメリットを知って、自社に合った方法で請求書を作成しましょう。請求書がインボイス制度のルールを守っていない場合、受け取った人が消費税の仕入税額控除などに利用できないため、正しい記載方法を把握しておくことが大切です。


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